黒澤久雄(61)
東京オリンピックの年に鞄職人の道を歩み始める。親方の元で腕を磨いた後独立し、第一線で鞄の製造を行う。 現在はアトリエ8845で鞄の修理・リフォームに腕を振うこの道40年以上の大ベテラン。
黒澤さんがこの仕事を始められたのはいつ頃ですか?
私が仕事を始めたのは東京オリンピックの年ですから、もう長い間この仕事を続けています。 この道に入った頃は親方の元に住み込みで働いて修行し、その後独立してずっと鞄の製造をしてきました。 でも職人として自信が持てるようになったのは、この道に入ってから10年もたった頃ですよ。
それだけ技術が必要とされるということなんですね。 以前は鞄の製造を、現在は修理やリフォームをされていますね?
製造と修理では作業が違いますが、あるべき姿にするという本質は同じです。 ただ修理やリフォームというのは、同じ種類の鞄を作るのとは違って、同じものはひとつとしてありません。 ひとつひとつ違いがあって、違う技術が求められます。それがとてもおもしろく感じています。 また修理やリフォームは、お客様が大切に扱ってこられたものですから取り扱いはとりわけ慎重に行っています。
やはりお客様が長年愛用されてきたものが多いのですか?
ご自身が愛用されていたものや、親御さんがお使いになっていたものをお子さんが修理してまた使いたいという場合、
現代風にリフォームして使いたいといった様々なケースがあります。
ブランド品で正規のお店では修理を受け付けてもらえずお持ち込みになる場合もありますね。
新しいものが買えないわけではないのに、修理やリフォームして使い続けたいというお客様の気持ちが感じられますので、
身の引き締まる思いで仕事をさせて頂いています。
まさに商品ひとつひとつに背景があり、ひとつとして同じものがないわけですね。
ところで修理の品を前にした時どう直そうかというのはすぐに思いつくのですか?
ええ、何通りかこうしようというのはすぐに浮かんできます。考えるというよりも経験から身に付いたものだと思います。
同じように見える鞄がふたつあったとしても、作る工程が違えば直し方も変わってきます。
作るよりも直す方が難しいこともありますね。
また職人によって個性というか違いがあって、革の当て方や手のすきや付け方など微妙に違うものなんですよ。
職人さんによって個性が出るもんなんですね。
個性といっても職人がでしゃばってしまうのではありません。最も大切なのは「お客様のご要望にお応えする」ということです。
自分が満足するかではなくて、お客様がどういうものを求めておられるかです。
そのために最もよい方法を選ぶということが大切です。
お客様がイメージしておられるものを、細かくきっちりお聞きして、喜んでいただけるものを作りたいと思っています。
職人さんといえば頑なイメージがあったりしますが、決してそうではないと。 お客様に満足していただくというのが一番大切なんですね
伝統工芸などの職人さんとは違って、身近におられるお客様が最も大切な存在ですから。
ひとつひとつ、その鞄なり財布なりを愛用されているお客様を感じられるから本当にそう思いますね。
どれも精魂を込めて仕事をさせていただいていますが、お電話なりメールなりでお客様の満足の声を聞いたときは
やっぱり嬉しいものです。何十年とこの道を歩んできて、今も仕事ができているのは本当に幸せな事だと思います。
これからもお客様に満足してもらえるよう励んでいきたいと思っています。
本日はどうもありがとうございました。
「アトリエ8845」は、前身のアトリエアップル時代から 鞄(バッグ)・財布・ブランド品といった革製品の修理・リフォームを 手がけてきました。そもそも「アトリエ8845」は、鞄・財布の製造メーカーとしてたくさんのお客様にご愛顧頂いている 創業70年の老舗バッグメーカー「株式会社 林吾」の修理部門なのです。長年の革製品の製造技術で培った技術力と経験を合わせ持った職人達が修理を行っております。
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